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2009年1月6日の娘

すぎやんが力尽きて息を引き取ると、主治医はそのまま退室されました。
そして看護師さんの手によって、すぎやんにぶら下がっていた点滴や機械類が取り外されました。

「ここんとこ、ずっとしんどかったね。つらかったね」

返事のないすぎやんへ、看護師さんはやさしく声をかけて下さってました。

すぎやんの最期を看取ってくれた施設長さんは、目を真っ赤にして泣いておられました。
私も涙がぽたぽたこぼれましたが、思いっきり泣かせてはもらえません。すぐ看護師さんから声をかけられます。

「寝台車はどこに依頼されるか、お決まりですか?」
「いえ、これからです」
「じゃ、これを参考になさって下さい」

看護師さんから渡されたのは、近隣の葬儀社が掲載されたタウンページのコピー。

「これから先生がIVHポートの取り出しをされます。その後、看護師ふたりでお体を拭かせていただきます。いっしょにされますか?」
「はい、できるならさせて下さい」
「先生の処置が終わって、お体を拭き終わるのは、今からだとたぶん8時15分くらいになるかと思います。寝台車はそのくらいの時間を目処に呼んでいただければ。先生の処置が終わったらお呼びしますので、デイルームでお待ちいただけますか」

そこで、私と施設長さんはデイルームへ移動。

最初に、仕事がらみで入会させられた互助会へ電話したものの、対応が今ひとつだったのと、その会社の葬儀会館が近所にはないとわかり、一旦電話を切りました。
だらだら入会したままだったけど、もうこの互助会からは退会だ!

そんなことを思いつつも、看護師さんから渡されたリストを見ながら途方にくれた私、施設長さんに聞いてみました。

「どこかよく聞かれる葬儀社、知りませんかね?」
「この葬儀社さんは、入所者さんの家族さんもよく利用されてますよ。会館の横が火葬場なんです」
「へぇ、それは便利かも」

そこで、施設長さんから教えられたその葬儀社に電話。
8時過ぎに寝台車でお迎えに来ていただくようお願いしました。

すぎやんの処置が終わるまでの待機時間、ぽつぽつと施設長さんとお話し。
病院までの道すがら、すぎやんを強引にでも施設に連れ帰って、施設で最期を迎えさせてあげよう、そう意気込んで来られたとおっしゃってました。

しばらくすると、看護師さんが呼びに来て下さり、再度病室へ。

清拭は、私、看護師さんひとり、施設長さんの3人で行いました。施設長さんは、要所要所で手を貸して下さいました。
着用していたパジャマを脱がせ、私は顔から、看護師さんは足から、タオルで順番にすぎやんの体を拭いていきました。

低栄養状態が続いていたとはいうものの、高栄養点滴を24時間入れっぱなしだったおかげなのか、やせてやつれたということはありません。
そのかわり全身がむくみ、特にお腹はぱんぱんになっていました。

すぎやんの腕に巻かれていた本人識別用タグは、むくみのせいで皮膚に食い込んでいました。
私も看護師さんも、その事実に全く気付いていませんでした。さぞ痛かったことでしょう。

「痛かったな、ごめんな」

そう言いながら、看護師さんはタグをはさみで切って下さいました。

その看護師さんは、すぎやんの足を見てびっくり。

「足、日焼けされてますね」
「夏は半パンで、車いすで表に出て走り回ってましたから」

笑っておられました。

ほとんど動けなくなってからは、定期的に体位交換もして下さってはいたのですが、背中には褥瘡(床ずれ)ができはじめていました。

全身を拭き終わると、看護師さんは時間が経過すると排出されてくる可能性のある水分や血液を、鼻の穴や口の中に専用の器具を入れて排出します。
そして、鼻の穴や耳の穴に脱脂綿が詰められました。

おしりなどからも後々排出物が出るとのことで、きちんと拭き取った後、紙オムツと尿パッドが当てられました。

ひげが少し伸び始めていたので、何とかしたいなと思ったのですが、

「本当は剃ればいいのですが、カミソリなどを使うと、後々赤くなってしまうんです。できるだけ刃物を使わない方がいいんです。もしお手入れされるのなら、はさみでカットするくらいしか」

看護師さんからそうアドバイスされました。
まだ何とかしゃべることができた数日前、ひげを剃っておいてよかった。そうでなかったら、ちょっと汚らしい顔になっていたはずです。

小一時間前に病院の売店で購入した寝間着を着せ、清拭完了。

簡易化粧道具も渡されたのですが、あまりファンデーションを塗ると、真っ白になってしまうので、すぎやんらしくありません。
黄疸で変色した部分だけ、軽くファンデーションをのせました。

寝台車到着まで、まだ時間があります。
とりあえず親戚のひとりに電話し、すぎやん死亡の第一報をその親戚から回覧してもらうよう、依頼しました。

そして、荷物をまとめました。
洗濯済みのパジャマと開封済みのおむつ・リハビリパンツ・尿パッドは病院に寄贈することにしましたが、それでも結構荷物がかさばります。
何より、すぎやんの車いすがあります。

「施設まで、僕が運びましょうか?」
「いいんですか?」
「車で来てますし。お部屋に入れておきますよ」

「いいんですか?」と聞き返したものの、私ひとりではどうしようもありません。
施設長さんのお言葉に甘えることにしました。

私ひとりでの看取りだったら、どうなっていたことやら。

予定より早く寝台車が到着し、施設長さんとはエレベータホールで別れ、私とすぎやんは看護師さんふたりに付き添われ、地下1階に降りました。
出入口には既に葬儀社の職員がふたり待っておられ、手際よくベッドからストレッチャーにすぎやんを移動させ、車に運び込びました。
その様子をぼんやり見ていると、お世話になった主治医も見送りに出て来て下さいました。

車に乗り込む前、葬儀社の人から「何かひとこと」と促された私は、「長い間、ありがとうございました」とだけ言って、一礼。
3人に見送られ、病院を後にしました。

葬儀社の方は、自宅に運ぶつもりで来られた様子だったのですが、エレベータへの搬入が難しいし、葬儀は会館で行うつもりだったので、そのまま葬儀会社の会館に直行してもらうことにしました。

15分ほどで会館に到着、すぎやんは霊安室に安置されました。
霊安室とはいえ、接客スペースもあり、明るく立派なお部屋です。
さっそくすぎやんの体の周りに、ドライアイスが仕込まれました。

葬儀社の職員がすぐ来られ、葬儀方法についての打ち合わせ。
まず選択を迫られたのが、市営葬儀にするか、業者葬儀にするかということ。

葬儀社の会館の横には、市営の葬儀会館と火葬場があります。
業者の会館も市営の会館も、葬儀会場は3部屋。大きめの部屋が2つ、家族葬向けの小さい部屋が1つ。
ただ昨今は家族葬をされる方が増え、小さめの部屋から先に埋まっていくとのこと。

「実は、年末から立て込んでいるんです。年始は火葬場も休みなので、特に小さいお部屋はお待ちいただくような状態が続いているんです」
「どれくらい?」
「火葬場の都合もあるのですが、うちをご利用いただく場合は、小さい部屋だと丸2日お待ちいただくことになりますね。大きめの部屋なら、何とかなるんですが」

職員の方に案内されて、業者の会館の大きめの部屋を見せてもらいました。
祭壇になぜ大画面テレビがあるのかと不思議だったのですが、どうやら遺影が映し出される仕組みみたいです。時代の変化にびっくりしました。
その場で、葬儀についてざっくりとした説明を受けました。

親戚の数も少なく、親戚以外で予想される参列者は、施設のスタッフのみ。どう考えても集まる人数は20人前後でしょう。

ですが、見せていただいた部屋は、あまりにでかすぎます。市営葬儀会館の部屋の大きさも、さほど変わりないとのこと。
それに業者の会館の大きい部屋は、価格が半端ない。

業者の会館の小さい部屋だと、確かに市営の会館よりは値段ははりますが、価格差が大きくかけ離れているということもなさそうでした。
何より業者にお願いする最大のメリットは、全ての手続き関連が一任できること。市営葬儀だと、基本的に私が全て取り仕切らなければなりません。それが不要になるのです。

最悪2日待ってでも、小さい部屋にこだわることにしました。

でもまぁ、安いに越したことはありません。
そこで、第一希望は市営の葬儀会館の部屋、第二希望は業者の会館の部屋にしました。

「明日の朝、8時過ぎにはどうなるかがはっきりします。まず火葬場の順番を押さえないといけないんで」
「火葬場の順番?」

その場で火葬場に電話する職員さん。

火葬する場合、飛び込みで「焼いて」とは言えません。書類発行の必要もありますし、火葬場の前に「焼き待ち行列」ができても困るので、あたりまえですが予約順番制です。

葬儀云々の前に、まず火葬場の予約です。

葬儀の場所は様々です。自宅などでできない場合、自前の会館を持たない葬儀社は、市営葬儀場を勧める場合が多い。
そのため、火葬場の予約が取れた段階で、市営葬儀場での葬儀を希望される方が、そのまま予約を入れてしまわれる場合が多々あるらしいのです。

「今調べたら、予約の1番目じゃないんですよね・・・」

職員による説明がひととおり済み、ひとりになった私は、しばしすぎやんの顔を見つめたり触れたりして過ごしました。
ドライアイスのせいもあり、すぎやんの顔はひんやりしていました。

やっぱり、涙が、ぽとぽとこぼれました。

病院の売店で購入したパンを食べてから、タクシーを呼びました。
帰宅したのは、午後10時半頃。






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