<< 2009年1月3日のすぎやん | main | 2009年1月5日のすぎやん >>

2009年1月4日のすぎやん

2009年1月4日のすぎやん


朝8時45分頃、携帯電話の着信音で目覚めました。
病院の看護師さんからでした。

「今からすぐ来て頂くことはできますか?」
「え、何かあったんですか?」
「先生からの説明を聞いていただきたいのです。ちょっと容態が悪いので・・・」

気持ちは動転しているのですが、直前まで寝込んでいたので、寝とぼけた返事しかできない私。

「あ、えっと、今何時・・・」
「9時前です」
「すみません、これから朝ご飯食べるんで、10時までには行きます」

電話を切って、ちょっと気持ちを落ち着かせる。

大部屋にいるわけじゃないんだから、病室にはすぎやんしかいないんだから、コンビニでおにぎり買って、病室で食べればいいんだ。

そこで大急ぎで身支度を済ませ、途中のコンビニで食料を調達して、9時20分頃に病院に飛び込みました。
歯磨きをしてないのに気付いたのは、病院へ向かう途中でした。

すぎやんの部屋は2人部屋ですが、現在は完全に個室状態です。
部屋に入ると、空きベッドが撤去されていました。

いよいよ人工呼吸器か。

ベッドサイドの機械の数字は、前日に比べてもさほど変わりません。
ただ補充している酸素量が、前日までは1の目盛りに合わされていたのが、3になっています。

1リットルから3リットルに増やされているということです。

しばらくすると主治医がやってきて、私を別室に案内しました。

「とにかく容態がよくないんです。もうどうしようもないところまで来てしまっているんです」

そして、今までの経緯から順々に説明して下さいました。

すぎやんの病名は、十二指腸ガンと転移性肝ガン。
肝臓への転移が認められるので、外科医は「根治手術は不可能」と判断されました。
そこで、化学療法に移行。

抗がん剤のTS-1とジェムザールを、通常の7割程度の量から投与を開始しましたが、容態が悪化して投与中止。
貧血状態を解消するために輸血や血小板輸血が何度も行われ、点滴で栄養をかなり入れているにも関わらず、低栄養状態がずっと続いています。

この状態が長く続くと、血液が濃縮されたような状態になり、血液中の水分が周りの臓器に浸潤し始め、手足がむくんだり、お腹や肺に水がたまりやすくなるのだそうです。

また、血液の浸透圧が下がるため、体の中は点滴などの水分で一杯なのに、腎臓は脱水状態とみなすため、すぎやんの体内は非常にアンバランスな状態になってしまっています。

「そんなわけで現在は、心臓と腎臓が正常に機能していない、多臓器不全の状態なんです。今は、心不全を起こしかけてますね」

そう言いながら主治医が見せてくれたレントゲンの写真には、肺の辺りに白い影が見えています。

「機械の数字的には昨日とあまり変わりはないです。でも呼吸も荒いので、いつ呼吸が止まるかはわからない状況です」
「・・・」
「ご本人は『大丈夫だ』と言い張っておられますが、現在は気力でもっている状態で、かなりしんどいはずです。この気力が切れた時に、がたがたっと悪くなる可能性が非常に高いです」

私が朝から呼び出されたのは、やはりすぎやんに人工呼吸器を付けるかどうかの意思確認のためだったのです。

「心不全を防止するためには、気管切開をして、人工呼吸器を取り付ける必要があります。どうしますか?」
「・・・」
「もし付けるなら、今日これからしようと思っています」

人工呼吸器を取り付けると、肺と心臓の管理は機械で行うことになります。心臓への負担も少しは和らぐでしょう。
でも、すぎやんとの会話は完全に不可能になります。

「まぁ正直、ご本人も嫌がられると思います。しゃべることの出来る方は、たいがい嫌がられるんですよ」

人工呼吸器を付けたとしても、問題は解決しません。

呼吸器を取り付けると、水分を減らす、つまり現在の点滴量を減らす必要があるのだそうです。
そうすると、ただでさえ脱水状態とみなしている腎臓の脱水がさらに進行し、遅かれ早かれ腎不全の状態に陥ってしまいます。

呼吸器を取り付けなければ、心不全を起こす可能性が極めて高い。
もし無事に乗り越えても、必ず腎不全となってしまうだろう。
透析という手もあるが、元々の病気(ガン)があるので、透析担当医もOKを出さないだろう。万が一、透析ができたとしても、今度はガンが大きくなる。

主治医は、そうぽつぽつと言葉を続けます。

八方ふさがりです。

「アルブミンも3日間投与したんですけど、この薬は1ヶ月に3回しか使えないんです。それ以上使う場合は、全額自己負担となってしまうんです。利尿剤なども使用して尿の排出を助けてはいますが、それもいつまでも続かないでしょう」

血液検査の結果も悲観的な数字ばかりです。
そう、もう、打つ手がないということです。

ちょっと悩んだのですが、人工呼吸器を付けてもらうのはやめておくことにしました。
すぎやんを苦しめるかもしれないけれど、若い頃から何度も手術を繰り返していたすぎやんの体に、もうこれ以上メスを入れるのだけは避けたかった。
それに、少しでも会話ができるなら、それに賭けたかった。

「わかりました。それじゃあ、このままいきましょう。あとは、ご本人の気力次第です。点滴の内容も、これからまた変えます」
「あの、もうあと1ヶ月とか、そんなレベルですか」
「いや・・・1週間とかそれくらいですね・・・」

1ヶ月なんて無理だって、わかってました。覚悟はしてました。
でも実際に聞いてしまうと、やはりショックです。

ため息をついて呆然としてしまった私を、主治医はじっと見つめていました。

「今の状態って、やっぱり抗がん剤が効きすぎたんですか?」
「うーん、もともとの病状とか、体の状態もあったでしょうし・・・」
「でもきっかけが、抗がん剤?」
「きっかけにはなったでしょうね」

バイパス手術は逃げだと思って選んだ化学療法。それなのに、こんなことになってしまった。
すぎやんと2人で決めた道だけど、果たしてこれでよかったのか。
ここ数日、私の心にこみ上げるのは、そればかりです。

「こんなになるんだったら、バイパス手術を選んでおいたらよかったんでしょうか・・・。ちょっと悩んでるんです・・・」
「もし手術していたとしても、少しは食べられるようになっていたとは思いますが、患部はそのまま残っているから、どうなっていたかは・・・でも、低栄養状態にはなっていたかもしれませんね」

どっちにしても結果は同じだったのではないか、というニュアンスが、主治医の言葉の行間から伝わってきました。

ふらふらになりながら病室に戻ると、すぎやんは私の顔をじっと見つめます。
主治医と何を話してきたのか、気になる様子でした。

「呼吸がしんどそうやから、人工呼吸器を付けようかって聞かれたわ。そやけど、断ってきたで。そのかわり、もうちょっとしんどいで。点滴も違うのに変えてくれはるって」
「呼吸器は、嫌や」

納得してくれたようです。

ただなぜか、「オペ(手術)か」「外来へ行くんか」と、私に何度も聞きます。

「こんな体で、外来に用事はあらへん。それに、オペなんかできるわけないやんか。薬も変えてくれはるらしいから、もうちょっと頑張ろう」

この期に及んで、まだ「頑張ろう」と言わなければならないなんて。
すぎやんはもう、十分頑張っているのに。

それにすぎやんは、まだ治療費などの心配をしてます。
もうそこまで私に気を遣うのは、やめて。

疲れ切っていたのですが、お腹はすいたので、コンビニで調達したおにぎりを絶飲食中のすぎやんの横で食べる私。

「ごめんな。お腹すいたから、ここで食べるわ」
「それ、なんや」
「おにぎり。ごめんな、食べられへん人の横でこんなことして、鬼のような娘やなぁ」

私の言葉に、すぎやんは笑ってました。

そうこうしているうちに、すぎやんは「喉が渇いた」と言い出しました。
そこで看護師さんから主治医に確認してもらい、「少しずつなら水分もOK」とのことだったので、水を飲んでもらいました。

尿意はあるらしいのですが、しきりに「しょんべん、出えへん。痛い」と苦しそうに訴えます。腎臓の機能が確実に悪くなってきているのでしょう。
そのたびに、「楽にして。オムツしてるんやから、漏らすこともないんやで」としか声を掛けられないのが、本当につらいです。

まだ話ができる間に、来られる方には来てもらおう。

私は、すぎやんが暮らす施設に電話して、顔なじみのスタッフに顔を出してもらえるようお願いしました。
ちょくちょく施設まで来てくれていた、私の従姉(父の姉の子供)にも連絡を入れました。でも彼女のご主人も、ガンが悪化して入院中。予断を許さない状況だとおっしゃってました。

洗濯物を持って一旦家に戻り、洗い終わった洗濯物を夜に運びました。
すぎやんはよく寝ていたので起こさず、そのまま帰りました。






コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
カレンダー
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>
現在表示中のすぎやん
月ごとのすぎやん
コメント
「今週のすぎやん」とは
娘のサイト
娘もがんばってます。
娘が作ったテンプレートが雑誌に掲載・収録されました。
ベクターでも絶賛公開中。

エクセルとワードのテンプレートが7個掲載・収録。



エクセルとワードのテンプレートが9個掲載・収録。



エクセルのテンプレートが11個掲載・収録。


介護関連サイト
独立行政法人福祉医療機構
 「WAM NET(ワムネット)」


MY介護の広場

高齢者住宅情報センター

介護用品・福祉用具の店舗販売と通販 快適空間スクリオ(大阪府箕面市)

有料老人ホーム アミーユ

相互リンクサイト
♪楽しく過ごすための快適・介護 『MyKaigo』
介護ヘルパー資格を取得し、介護と子育てを両立されているまめさんによる、介護と介護者に役立つ情報紹介サイト。脳挫傷による急性硬膜下血腫で倒れ、後に脳幹梗塞を発症した要介護5の義理のお母様を在宅介護されている様子が、手に取るようにわかります。

ほれ、ぽちっとな




レビューポータル「MONO-PORTAL」
レビューポータル「MONO-PORTAL」
すぎやんのおすすめ
難波金融伝 ミナミの帝王(1)トイチの萬田銀次郎
難波金融伝 ミナミの帝王(1)トイチの萬田銀次郎 (JUGEMレビュー »)


「銀ちゃんは賢いやつや」と、すぎやん絶賛。
すぎやんのおすすめ
たかじんのそこまで言って委員会III
たかじんのそこまで言って委員会III (JUGEMレビュー »)


すぎやんは、昨今の時事問題をこの番組でチェックしている。(すぐ忘れるが(;_;))
すぎやんのおすすめ
水戸黄門 第一部 シリーズ BOX [DVD]
水戸黄門 第一部 シリーズ BOX [DVD] (JUGEMレビュー »)

「水戸黄門は東野英治郎や」と、すぎやんは熱く語る。
すぎやんのおすすめ
サザエさん (1)
サザエさん (1) (JUGEMレビュー »)
長谷川 町子

「サザエさんはいつまで経っても年とらへん。親父は1本の髪の毛にドライヤー当てとる」と、すぎやんは笑う。

すぎやんのおすすめ
DVD TV版傑作選 クレヨンしんちゃん 1
DVD TV版傑作選 クレヨンしんちゃん 1 (JUGEMレビュー »)

「長い顔のおかん」と「一家の顔がみな一緒」が、すぎやんのツボ。
すぎやんのおすすめ
ちびまる子ちゃん全集1990 「まるちゃんきょうだいげんかをする」の巻
ちびまる子ちゃん全集1990 「まるちゃんきょうだいげんかをする」の巻 (JUGEMレビュー »)


「ちびまる、顔に線が入る」と、すぎやんは楽しみにしている。
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM