
雨が降っていたせいか、「腕が痛い」とさかんに言っていたすぎやん。左腕が麻痺の影響で収縮してしまったのが、何よりも情けないといつも言います。
「こんなんになったんは、自業自得や」
「何が、自業自得なん?」
「お前やおかん(私の母のこと)に迷惑かけたから」
ふーん、と返事しながら引き出しを開けると、ビールとチューハイを買った時のレシートを発見。問いつめると、
「遊びに来てくれるスタッフの分を買うたんや」
お気に入りのスタッフが顔を見せると、すぎやんは「今日は泊まり(夜勤)か?」とか「もう、帰るんか」とよく聞きます。顔に似合わず寂しがりのすぎやん、特に夜は誰かとしゃべっていたいようなのです。それで、「(すぎやんの部屋で)ゆっくりしていけや」と、スタッフに声を掛けるのです。
だけどスタッフも、仕事が終わればきっとくたくたのはず。早く家に帰って休みたいと思っているはずです。それに、あまりおおっぴらにすぎやんだけの相手をするわけにもいきません。なので、「あんまり(スタッフを)誘うたらあかんで」と注意すると、またすねてました。
ちょっとブルーになりかけたすぎやんでしたが、すぐに復活。なぜかと言うと、新品のラジオを渡したからです。
今使っているラジオは、イヤホン端子の接触がかなり悪くなっていて、聞こえづらかったのです。新品のラジオは、今のAM・FM切り替えタイプよりもさらに単純な、AM専用。980円也。一応メーカー品ですが、安物です。それでもすぎやんは、むちゃくちゃ喜んでいました。
それと、電池式の蚊取り器も渡しました。外に出るとすぐ蚊にかまれる、右手をかまれたら、(左手が動かないので)かかれへん、と前からぼやいていたからです。ちなみに、この蚊取り器と予備のマットの合計額は、先のラジオより高価です。なんだかなぁ。
2つも新しい物を手に入れたすぎやんは、軽い興奮状態です。
「蚊取り器、どこに置いたらええかな」
「誰かにひもをつけてもろうて、後ろにぶらさげよう」
「ラジオ、(外出時に)持って出るん忘れんように、(車いすの)後ろのポケットに入れとこ」
私がすぎやんに何かを買い与えると、たとえどんな安物でも、必ずスタッフに「買うてもろた」と自慢して回っているようです。
すぎやんの喜びようが、ちょっと気恥ずかしい私です。