2008年11月20日のすぎやん

2008年11月20日のすぎやん


いよいよ入院の日がやってきました。

介護タクシーのお迎えが9時半の予定だったので、9時過ぎにはすぎやんの部屋に行きました。
検査などで非日常的な出来事が続いているので、すぎやんは興奮気味です。体調は今ひとつのようですが、胃の痛みより興奮が勝っているみたいです。

出発前、スタッフのKさんが部屋に来て下さり、すぎやんの話し相手になってくれていました。
すぎやんったら、しゃべるしゃべる。

時間通りに介護タクシーも到着。スタッフに見送られて出発しました。

この日の運転手は愛想のよい方で、私達にいろいろと話しかけてくれます。
すぎやんがあまりにハイテンションでしゃべっているので、「これから入院するんです」と言うと、びっくりされてました。

病院には、30分ほどで到着。約束の10時半より30分近く早めの到着となりました。
受付を済ませた後、救急外来へ案内され、主治医となる先生による問診が行われました。

私とすぎやんが話した内容を、先生自らパソコン入力されています。
思わず、「先生も今時は、パソコンやで」とすぎやんに話していると

「もう、大変なんです、これ。手書きの方がええんやけど」

問診終了後、すぎやんは入院前検査に向かいました。
私はそのまま残り、先生とさらに突っ込んだお話をしました。

「紹介状から見ると、十二指腸乳頭部に腫瘍ができているみたいですね」
「医院の先生からは、十二指腸に限りなく近い所にできている胃ガンだって聞いてるんですけど・・・」
「え、そんなことはないと思うんやけどなぁ」

赤血球の数も、「これくらいやったら、そんなにむちゃくちゃ激減っていうこと、ないんやけどな」とおっしゃる。

どっちがほんまなんですか。

胃ガンなのか、十二指腸のガンなのかによって、手術方法も大きく変わります。
胃ガンなら比較的手術は簡単だけど、十二指腸乳頭部にできているとしたら、かなり難しい手術になるとの先生の言葉。

どっちにしても、まずは精密検査です。
とりあえず、再度胃カメラ検査が行われることになりそうです。

問診が終わり、すぎやんの検査終了を待つことになりました。
だけどすぎやんは、いつまで経っても検査室から出てきません。
その原因は、点滴。

ここ数日、食事が満足にとれていないので、点滴をすることになったらしいのですが、点滴の針が入らない。
私はその場にいなかったのでわからないのですが、数人がトライしてかなり粘ったらしいのですが、あえなく全員玉砕。運良く入っても、すぐ漏れてしまいます。

結局、この日の点滴は中止となりました。
ただ点滴治療は今後必要となるので、首のあたりから針を入れることになりそうです。

すぎやんを待っている間に、病院のあちこちを歩き回りました。
実は今回すぎやんが入院する病院は、かつて私の母が看護助手として長年勤務していた病院です。
そして、母が亡くなったのも、この病院でした。

今から15年前のちょうどこの頃、母はガンの末期症状にさしかかっていました。
毎日仕事帰りに母の元へ通う日々が続き、つらそうな母の様子を毎日目の当たりにして、私自身も心身ともに疲れ果てていた時期でした。

この病院は、5年ほど前に新築移転されたので、当時とは少し場所が違います。
だけどまさか父・すぎやんまでここに入院することになろうとは、夢にも思いませんでした。

普通なら30分もあれば十分な検査が終わったのは、検査開始から1時間以上経ってからでした。
検査室から出てきたすぎやんは、さすがにちょっと疲れた様子でした。

「もう帰る」
「今日は入院するために来たの」
「あ、そうか、わし、あほやな」

このやりとり、病棟に上がるまでの短時間に、3回は繰り返したかな。

すぎやんの入院する病棟は6階。
エレベータホールの北側が女性、南側が男性の病棟です。完全に男女別になっているため、トイレは南病棟には男性用、北病棟には女性用しかありません。
廊下の色も南はブルー、北はピンクに色分けされ、間違えないように工夫されています。
ナースステーションも、北と南の両方にあります。

案内された病室は4人部屋、窓際のベッドでした。
看護師さんによる問診・説明の後、すぎやんの尿器を保管するケースも持って来て下さいました。

持参した荷物を床頭台(しょうとうだい)に入れながら、あちこちチェック。
最初、備え付けのテレビはないと思ったのですが、据え置きタイプではなく、角度を自由に変えられるアームの先に取り付けられていました。25時間1,000円。
冷蔵庫もありますが、有償。

床頭台には専用のアダプタがセットしてあります。テレビや冷蔵庫を使用するには、そのアダプタを抜いて専用の機械にセット、お金を入れてチャージして使用するのです。
こういうタイプは、初めて見ました。

病衣などのレンタル制度はないので、全て持込です。これからしばらくは、洗濯の回数が増えそうです。

場所も限られているので、車椅子を広げたまま出しっぱなしにしておくこともできません。
普段は個室で暮らしているすぎやんにとっては、かなりせせこましく感じるようで、「これから大変やな」とぼやいています。

とにかく入院中は遠慮はしないこと、便をしたくなったらナースコールを押すことなどを、何度も何度も繰り返し言い聞かせました。
入院手続きを済ませて病院を出た時には、2時半を回っていました。

看護師さんの説明によると、翌日は入浴日だとのことだったので、病院の帰りに施設に寄り、すぎやんが普段使っている入浴セットを持ち出しました。
日勤勤務中だったすぎやんの居室担当のMさんが、私の顔を見て駆け寄ってこられました。

今後は検査の結果次第ですと伝えると、Mさんは「いつもお元気だったので、僕、ショックです・・・」と、しょんぼり。

事務所を覗くと、施設長さんがおられたので、ご挨拶。

「どのくらいの入院になりそうですか?」
「一応、3週間と先生は書類に書かれてました」
「え、そんなに・・・。お見舞いに行かせてもらっていいですか?」
「どうぞどうぞ。行ってやって下さい。施設長さんのことは大好きだから、喜ぶと思います」

家に戻ったのは夕方。たっぷり1日仕事でした。疲れました。






2008年11月21日のすぎやん

2008年11月21日のすぎやん


前日の入院時に持参したパジャマは、L寸。
すぎやんはかつてかなり太っていた時期があり、このパジャマはその頃に購入したものです。

パジャマが必要な入院は4年ぶり(2年前の入院時は、病衣はレンタルしたのです)。
そこでスーパーに行って、M寸のパジャマを洗い替えを含め3着購入しました。

紳士用パジャマって久しぶりにじっくり見ましたが、結構高いですねぇ。
安くて暖かそうなものを選ぶの、苦労しました。

私が到着した時は寝込んでいたすぎやん、しばらくすると目を覚ましました。
今日は特別検査もなく、退屈している様子です。

でも、前日からの興奮ぶりはまだ治まっていません。

「今日、帰るんやろ」
「明日、胃カメラやから、帰られへん」
「カメラ終わったら、帰れるんやろ」
「まだしばらくここにおる」
「なんでや」
「ここは病院。すぎやんは、具合が悪いからここに来てるの。それが治らな、帰られへん」

このやりとり、何回繰り返したか。

神経質なのも、相変わらずです。

「今日、風呂や。着替え、出しとけ」
「何時に来はるかわからへんから、看護婦さんに出してもらったらええやん」
「どこにあんねん」
「この中。昨日も言うたやろ」
「どれ着たらええねん」
「どれでもええやん」

服を入れた場所は、前日から繰り返し言い聞かているのに、これです。
同じ事を何回も繰り返していると、実際疲れまっせ。

「スプーン、ここのを借りてる」
「お箸、持って来てるから使えば?」
「おかゆさんやから、箸では食われへんやろ」
「え〜、今までお箸で食べてたやん。スプーン、使ってへんかったやん」
「スプーン借りるん、いやや。誰が使うたかわからんから、汚い」
「何言うてるん。ちゃんと洗ったはるやん」

ほんまに失礼なことを言うおっさんです。

「ここは売店あるんか」
「下にあるけど、自分、お金持ってへんから何も買われへんで」
「口さびしいから、ハイソフト買うてくれ」
「明日、胃カメラやろ。今日はとりあえず我慢して」
「もうわかったわい。もう言わへん」

むくれる姿は、子供と一緒。

言い合いしている最中に、前日行われた血液検査の結果を持った主治医の先生が登場。

赤血球の数は確かに少ないけれど、輸血するほど低いということはないとのこと。しかし、栄養状態があまりよくないとおっしゃいました。
食べ物は胃に溜まったままだし、数日前からおかゆしか食べてないから、当然です。

翌日の胃カメラの検査がいつ出るのか確認すると、昼頃には話ができるとおっしゃったので、とりあえず途中経過としてのお話を聞くことにしました。

すぎやんは最後まで、「帰らしてくれや」と私に訴えていました。
慣れない場所なので、イライラしているのでしょうね。

イライラしているのは、私も同じ。
だって、「様子がおかしい」と初めて聞かされたのが、今月の10日。
すぎやんが入院を最後まで嫌がり、ここまで来るのにかなり遠回りしてしまったため、正式な病名や病状などの詳細を聞かされないまま、10日以上経過してしまっているからです。

ガンであることは、まず間違いないと思います。
だから、すぎやんと共に病気とどう向かい合っていくか、私も早く覚悟を決めたいのです。
じりじりと結果を待つのって、精神的にものすごくしんどいです。

家に戻り、1時間ほど熟睡してしまいました。






2008年11月22日のすぎやん

2008年11月22日のすぎやん


部屋に入ると、主治医による処置の真っ最中。
胃カメラの検査結果を聞かせてもらえる予定だったので、ナースステーションの前にあるデイルームで、先生を待ちました。

処置終了後、面談室でお話を聞きました。

その日の朝に撮影した胃カメラの写真を見ると、数日前にクリニックで見た画像より、さらに胃の中には食べ物が増えていました。
先生は、「かなり残渣(ざんさ)がありますね」とおっしゃいました。

十二指腸下行脚部(じゅうにしちょうかこうきゃくぶ)に腫瘍があり、十二指腸が狭窄(きょうさく)している状態であるとのことでした。


主治医の説明


「腫瘍の隙間は9ミリくらいあいてるんで、胃をからっぽにしてからなら、おかゆくらいは通るんじゃないかと思います」

現段階での病名は、「十二指腸腫瘍(しゅよう)」。
決して「ガン」とはおっしゃいません。

今後は、とりあえずしばらく絶食、点滴治療を続けるとのこと。
絶食して胃が空になった時点で、造影剤を入れてCT撮影をするとおっしゃいました。

「造影剤を入れてCT撮影したら、何がわかるんですか?」
「ガンがどのように広がっているかが見えるんです」

私が「ガンじゃないんですか」と聞いても「腫瘍」だと言い張っていた先生、自分から「ガン」と言っちゃいました。

私が部屋に到着した時に行われていた処置は、中心静脈へのカテーテル挿入でした。
今後はここから点滴が入れられることになります。

胃カメラで採取した細胞診断の結果が出るまで1週間くらいかかるし、検査は連休明けからなので、最終結論は翌週末から翌々週早々くらいになりそうです。

面談室から出ると、病室で胸のレントゲン撮影が行われていました。

様々なつらい検査や処置を受けた経験があるすぎやん。滅多なことでは弱音は吐きません。でも、首筋へのカテーテル挿入は、さすがに痛かったみたいです。
かなり疲れた様子で、ちょっとぐったりしてます。

それにしても、こんな所から点滴を入れるだなんて。
痛そうだなぁと思いつつ、バッグからデジカメを取り出す鬼のような私。

「また写真か」
「そやけど、こんな所から点滴入れるなんて、私、初めて見たもん」

で、ぱちり。


首筋のカテーテル


この日の胃カメラは口からの挿入だったらしいのですが、非常に楽に検査できたと喜んでいました。
先日の鼻からのカメラ挿入は、ちょっと痛かったらしいです。

実は、前日に欲しがっていたハイソフトを、1箱だけ持って行ってました。
だけど、絶食となってしまったので、食べてもらうことができなくなりました。

「かまへんやんけ」
「絶食中やから、ダメ」
「ワンカップ、買うてこい」
「あほ。よけいにあかんわ」

明らかに、私をからかってます。

「あんぱん、買うてこい」
「あんぱん! 久しぶりに聞くなぁ。前はよう食べてたもんな。でも、あかん」

ずいぶん前、しょっちゅうあんぱんを食べていた時期があったんです。
まだ母が存命中の頃だったかな。

「お茶は飲んでもええんやで」
「なんでお茶はええねん」
「水分は通るからやん」

十二指腸にできものができていて、食べ物が胃の下に落ちていかないから、お腹も空かないし食べられないんだって、何回説明してもわかってもらえません。
食べたいというより、口がさびしいんですね。

適当な軽口を叩いているすぎやんですが、やはりしんどいらしく、起き上がってもすぐ横になってしまいます。
「もうほんまにあかんな、長くないな」とつぶやく口調からは、何ともいえない感情が見え隠れしています。






2008年11月23日のすぎやん

2008年11月23日のすぎやん


病院へ行く途中に、施設に立ち寄りました。

テレビに使用する短めのイヤホンや、すぎやんが普段使用しているハサミやメモ帳、小物入れなどを持ち出しました。

また、ちょうどいい機会だと思って、冷蔵庫のプラグを抜いて霜取りをしていたのですが、それも終わっていたので冷蔵庫を掃除、待機電力節電のために部屋のブレーカーを完全に落としておきました。

すぎやんは、漫才番組を見て、へらへら笑っていました。
ベッドサイドにある椅子の上に、パンツが置いてありました。手に取ると濡れていたので、どうしたのか聞いてみると、また尿器の尿をこぼしてしまったみたいです。

できる限りパンツ生活を続けてほしいと思っていますが、紙オムツにお世話になる日がだんだん近づいているのかもしれません。

「腹が減った。絶食、いつまで続くんや」
「胃を空っぽにせんとできひん検査がまだ残っているから、とにかくそれまでは無理。連休で明日まで病院は休みやから、最低明日いっぱいは無理やと思うで」
「まだ検査があるんか」

腹減ったと、私のいる間に何度繰り返したことか。

栄養点滴が回り始めたおかげで、少し顔色がいいように思います。でも、入院するまで我慢して無理を重ねていたので、まだまだしんどそうです。
首筋のカテーテルもわずらわしく、カテーテルが入った箇所を枕に当てるような寝方をすると痛いようです。

前日私が帰宅した後、しばらく止まっていた便が出たと言っていました。

「一番かなん(困る)のが、トイレやな。部屋にトイレがあったら、自分で好きな時にできるけど、看護婦が外で待ってるから、せわしない」

自分で何でもしようとする姿勢は素晴らしいし、トイレにも自由に行きたいという気持ちもわかります。
でも、今は入院中。

とにかく無理はしないこと。
入院中は気を遣わずに看護婦さんに甘えること。
用があれば、遠慮せずにナースコールを押すこと。
今まで無理をしていたのだから、ゆっくり養生すること。

この日も、何度も何度も繰り返し言い聞かせました。

私の頼みを聞いているのかいないのか、すぎやんは「早う連れて帰ってくれよ」と私に何度も言っていました。

それでも、入院日にはかなり興奮していたすぎやんですが、だいぶ落ち着いてきました。
同室の患者さんの入れ替わりなどに神経をとがらせているようですが、少しずつ入院生活に慣れ始めているようです。






2008年11月25日のすぎやん

2008年11月25日のすぎやん


私の顔を見るなり、すぎやんが食いついてきます。

「お前、聞いてるんやろ?」
「何を?」
「腹切りや、切腹や」
「何、それ?」
「今先生が来て、手術やって言わはった」
「え、ほんまに?」
「聞いてへんのか」
「うん、そんなことまだ、聞いてへん」
「さっき帰らはったとこや」

テレビ代をチャージするためにデイルームに行き、部屋に戻ろうとすると、ナースステーションにおられた主治医に呼び止められました。

「うちで検査する前に行かれたクリニックでの病理検査の結果が、こちらに届きました。悪性でした」

だから最初から、「ガンでしょう?」って私が確認していたのに。

そして先生は、血液検査とMRI、造影剤を入れてのCT撮影を今週中に行うとおっしゃいました。CT撮影は、翌々日に実施するとのことでした。
これらは、ガンがどこまで広がっているかを確認するための検査です。

完全に治すためには、手術しかない。あちこちの臓器をつないでのバイパス手術や、現在9ミリくらいの隙間しか空いていない十二指腸の狭窄部分をふくらませる手術など、方法はなくはない。しかし、腫瘍がかなり広範囲かつ大きいので、かなり難しい手術になる。
周りの臓器や細胞などへの広がり具合によっては、手術ができない可能性もある。

先生は、そんなことをおっしゃいました。

「でも手術をすると、かなり弱るでしょうね」
「そうですね」

手術をしなければ、流動食しか食べられない状態が続く。
手術をしたら、たとえ成功しても、かなり体が衰弱するのは間違いない。

要するに、手術をしてもしなくても、危険な状態であることは間違いないということです。出るのはため息のみ。

ぼーっとしながら部屋に戻り、先生と会ったと伝えた後、すぎやんにこう説明しました。

十二指腸にできものができているのは間違いない。
だからそれをどうしたら一番効率よく治せるか、今週検査して決めるそうだ。
まだ手術をすると決定したわけではない。

私の話を聞いたすぎやんは、こうつぶやきました。

「それでもここにしばらくはおらなあかんねんな。施設には帰られへんなぁ」

点滴のおかげで、しんどいながらも少し元気を取り戻した様子です。
しきりに「腹が減った」と言うすぎやんです。
ずっと絶食状態が続いていたのですが、この日の夜から流動食が開始される予定です。

「にぎり寿司買うてきてくれ」
「あかん」
「ハイソフト、買え」
「寿司もあんぱんもハイソフトも、今はあかん。ずっと絶食してて、今日からやっと流動食やのに、そんなん急にお腹に入れたらあかん」
「黙ってたらわからへん」
「わかるわ。それに黙って食べさせて、何かあったら、私が怒られる」

できることなら、頑張っているすぎやんのリクエストに応えたいのですが。
胃は何ともないので、私も余計につらいです。

この日は私の誕生日。
何とも言えない気持ちで迎えたバースデーでした。






2008年11月27日のすぎやん

2008年11月27日のすぎやん


この日の最初の会話。

「『検査全部済んだから、もう帰ってええ』って言われた。わしが『病院いやや』って言うとったら、そう言われた」
「・・・うそや。そんなこと聞いてないで」
「『もうしばらくゆっくりここにおり』って言われた・・・」
「そうやろ」
「すぐ帰れると思ってたのにな」
「見通し、甘いって。24時間ずっと点滴してる人が、帰れるわけがありません」

床頭台には、点滴や服薬中の薬剤情報が届いていました。
薬は、施設で服用していたものと変わりません。点滴はソリューゲンGという栄養点滴が24時間、朝から夕方まではダイモンというビタミン剤が加わります。

さらに流動食ではありますが、食事も再開。でも、

「お椀が3つくらい、ぽんぽんってあるだけや。おかゆさんと、何か野菜みたいなのがあって、飲んだらしまいや」

思うようにうろうろできないのがつらくて、ちょっと落ち込み気味ではあるけど、点滴のおかげで何とか元気にしています。

この日は、造影剤を使用したCT検査が行われました。
造影剤を使用した検査は、すぎやんはかなり久しぶりです。

「どうやった?」
「20年以上前の造影検査は熱かった。そら、つらかった。そやからちょっとびくびくしとった。そやけど、ちょっと体がぬくくなって、熱くなってきたなぁと思ったら、もう終わりやった。楽やったわ」

朝に採血もあり、MRI検査がまだ残っていると言っていました。

満足に食事をしていないので当然なのですが、すぎやんの悩みのひとつが、便が出ないこと。
主治医や看護師にも訴えていたようで、薬が出ました。

さらに、尿をこぼしまくることも悩みのひとつ。
私がいる間に2度ほど用を足したのですが、「立つからズボンあげてくれ」と頼まれたのでズボンに触ると、濡れてます。よく見ると、シーツにもしみ。

「濡れてるやん。履き替えたら?」
「めんどくさい」
「そやけど、くさいで」
「黙ってたらわからへん。明日の朝までに乾く」
「パジャマは明日着替えさしてもらえるからええけど、黙ってたって絶対ばれるで。こんなしみになってるんやから」
「言うな。絶対言うな」
「黙ってたってばれるやん。むっちゃくさいわ」
「・・・なんか、漫画みたいやな。お前とわし」
「なんで私まで、漫画にするんよ」

何だか私までめんどくさくなり、翌日は入浴または清拭をして頂ける日なので、ほうっておくことにしました。

すぎやんが、何とか自分の気持ちを盛り上げようとしている様子が、私にはちょっと痛くてつらいです。
もっとはっきり、しんどいとかつらいとか言ってくれた方がいいのに。
神経を張り詰めず、もっと肩の力を抜いて、もっと素直になってくれた方がうれしいのに。






2008年11月29日のすぎやん

2008年11月29日のすぎやん


朝、主治医から電話がかかってきました。

「十二指腸にできた腫瘍は悪性で、肝臓にも少し影が見えています。ただ、すい臓には転移していないようです。たぶん、十二指腸にできたガンでしょう」

すぎやんの病名は、「十二指腸ガン」ということです。

先生は続けて、外科的な手術ができるかどうかを判断するために、来週月曜日に外科の外来で診察を受けてもらおうと思っているとおっしゃいました。

「で、診察は何時ぐらいからなんですか?」
「診察時間はねぇ・・・わからないんですよ。でもだいたい午前中で、10時〜11時頃になることが多いです。それで、できればで結構なんで、家族さんにも一緒に話を聞いて頂きたいんですけど・・・」

外科的な手術ができない場合は、内科的な処置を考えないといけないし、もう年末年始が近づいているんで、早め早めに進めておきたいんです、と付け加えられた先生は、血管造影検査を行いたいともおっしゃってました。

「手術するなら、この検査は絶対必要なんです」

午後から、すぎやんの所に行きました。
前日に、MRI検査が行われたようです。

「MRIって、どんな検査なん?」
「CTよりももっとでっかい、体全体が入るような大きなかまの中に、寝転んだまま入るんや。しんどくなったら押すようにって、スイッチ持たされた。痛いことも何ともないけど、30分ぐらいかかったわ」

点滴を見ると、先日から少し薬が代わり、ツインパルとダイモンが昼間12時間、ツインパルのみが夜間12時間、すぎやんの体内に注入中。
24時間、ずっと点滴しっぱなしです。

点滴のおかげで顔色は悪くないのですが、しょぼんとしてます。

「『この検査が終わったら、すぐ帰れると思っていた』って先生に言うたら、『まだまだ、しばらくはおらなあかんよ』って言われた。12月いっぱいはここにおらなあかんのかな。正月はここかな」

外科での診察も既に主治医から聞かされたようで、不安そうな表情をしています。
そこで、「切るのは外科の先生やから、すぎやんが途中で死んでも困るから、手術ができる体かどうかを調べてもらうんやで」と言い聞かせ、なぜ手術が必要なのかも再度説明しました。
十二指腸に腫瘍ができているということを、やっと理解し始めた様子です。

「ガンか」
「いや、腫瘍としか言わはらへん。ようわからへん」
「(先生は)お前にはほんまのこと、言うわな」
「そやな」

十二指腸の場所も、今ひとつ理解していないすぎやん。それで、こんな愚痴も出てきます。

「人工肛門はいやや」
「いや、人工肛門っていうのは、また違う。すぎやんが悪いのは、胃と腸の間やから。食べ物が腸まで行ってないから、人工肛門は関係ないで」

相変わらずトイレの悩みはつきないようで、「便をする時に看護婦さんを呼ぶのがいやだ」と言い続けてます。
まぁ、当然のことなのですが・・・。

「ここは病院。遠慮せんと呼んだらいいんやで」
「・・・」
「頑張るのと無理するのとは違うで。ここでは無理せんと、また施設に帰ったら、自分で何でもやったらいいから」
「・・・・」

納得してません。

「頑張ると無理するを一緒くたにしてるから、病気が重くなって、ここで籠の鳥状態になっているんやで。もっと早くしんどいって言ってたら、入院せんで済んだんやで」
「・・・・」

それでも納得してません。

「やっぱり施設が一番ええな。うるさいけど話し相手もおるし、自由にできる」
「そうやろ。病院よりもええやろ」
「飲めへんし」
「・・・そこかい」
「ビール、冷えてるやろな」
「きんきんに冷えて、今頃は凍ってるかも」
「休肝日やな」
「ずっと休肝日にしとき」

夜、施設長さんから電話がありました。
入院中の病院から届いた検査結果を見たすぎやんのかかりつけ医から、施設側に連絡があったみたいです。

「詳しいこと、聞いたはりますか?」
「まぁ、大体のところは」
「ステージ5らしいですね・・・」
「うわ、それ、初耳」

「ガンである」ということは、もうはっきり聞いていましたが、「ステージ5」というような具体的な数字は一切聞かされていなかった私。
だけど私の言葉にびっくりした施設長さんは、しきりに謝っておられました。

でも、真実を全て知りたいと思っていた私にとって、外部から新しい情報を聞けたのはラッキーでした。
だからその後は、「気にしないで」と、私が施設長さんをなだめるの図。

「検査だけで3週間もかかるってことだったんで、不思議に思っていたんです。すごいショックです」
「先生は手術される方針ですけど、できるかどうかはまだわからないんです。来週早々に外科を受診する予定です」

なんだかんだと、30分くらいしゃべってしまいました。

入院生活がいつまで続くのか、手術をするのかなど、ある程度の予定が見えてきたら、今後のことについて施設側と話し合う必要がありそうです。






2008年11月30日のすぎやん

2008年11月30日のすぎやん


施設に立ち寄り、部屋に置いてある車椅子用の座布団と卓上カレンダーを持ち出しました。

入院して早や10日。
時計は入院日に持ち出したのですが、すぎやんが「今日が何日かわからへん」と言い出したので、普段使っているカレンダーを持って行くことにしたのです。

病室に行くと、すぎやんが困った顔をしています。
聞くと、トイレに何度も失敗したようで、洗濯物を入れる袋は一杯になってます。パジャマの替えはなくなり、パンツも2度履き替えてます。

「あれ、今履いてるのも濡れてるんとちゃうん」
「おう」
「うわ、シーツも濡れてるやん」
「夕方交換してくれるらしいわ」

そこで、シーツの濡れている場所に、バスタオルを敷いておくことにしました。
シーツ交換までの時間、とりあえずこれでしのげるでしょう。

私がいる間にも、数回用を足しました。
すぎやんのモノは、年齢のせいもあってかなり縮こまっています。

「かわいいなぁ」
「小そうなったわ。そやけど男は、道具やないぞ」
「?」
「道具やのうて、テクニックや」

ひっくり返りそうになり、私は思わず大笑い。
言った本人も笑いながら、「親子であほなこと言うてるのう」とつぶやいていました。

こういう時間、大切にした方がいいんだろうな。

ところで、すぎやんの用を足す姿を見ていて思ったこと。
今まで尿器に溜まった尿をこぼして、ズボンなどを濡らしているのかと思っていたのですが、どうもそれだけではないみたいです。

点滴をすると、どうしてもトイレが近くなります。すぎやんの場合、24時間ずっと点滴しっぱなしですから、こまめにしたくなっちゃうのです。で、あせる。
その結果、自分のモノを尿器の口に入れる前に尿が出てしまい、パジャマやシーツを濡らしてしまうということの方が、実際は多いようです。

失敗が続いてやや落ち込み気味ですが、それでも「夜にナースコールを鳴らすのは嫌や」と言い張ります。
だけど実際問題、こんなに失敗が続いて洗濯物が毎日どっさり出ると、私も困ります。
私が病院に行けない日だって、必ずあるわけですからね。

毎日毎日「便と夜のおしっこの時は、コールを鳴らして看護婦さんを呼ばないと、また失敗するよ」と言い聞かせ続けています。
ズボンを脱ぐのに手間取っているので、前が開いているパジャマを与えた方がよいかもしれません。

翌日は、外科外来での診察日です。

「検査、嫌やな」
「検査とちゃうよ。外科の外来で診察やで」
「診察? なんでや?」

またかいなと思いつつ、診察が決まった時から繰り返している説明を、この日も繰り返す私。

「そうか。明日は運命の日やな」

「自分の様態が、かなり悪いのではないか」と冷静に予想しているかと思えば、「診てもらったら、『はい、もう結構です。ようなりました。どうぞ帰って下さい』って言われるかな」とも言い、不安で一杯な様子が見て取れます。






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ちびまる子ちゃん全集1990 「まるちゃんきょうだいげんかをする」の巻 (JUGEMレビュー »)


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