2008年12月26日のすぎやん

2008年12月26日のすぎやん


午前中に病院から電話がかかってきました。

「今、状態もよくないですし、輸血などもありますので、部屋代が1日5,000円ほどかかるんですけど、2人部屋に移って頂きたいんです」
「あ、そうなんですか。わかりました」
「ご本人に確認させて頂きましたら、『家の方に電話しておいてほしい』とのことでしたので、ご連絡させて頂きました」
「ありがとうございます」
「午後から移動して頂こうと思います。作業はこちらで全ていたしますので」

夕方近くに行ってみると、すぎやんは既に2人部屋に移動していました。
ナースステーションにおられた主治医の先生が、私の姿を見て声を掛けて下さいました。

「だいぶ元気になられましたよ。貧血もだいぶ改善されましたし」

2人部屋とはいえ、もうひとつのベッドは空いているため、個室状態です。
大部屋で使っていた床頭台がそのまま移されていたため、荷物の整理をする必要もありませんでした。

少ししんどそうですが、すぎやんは思いの外元気な顔をしていました。
私の顔を見るなり、ぼやきます。

「テレビがつかへん」
「え、なんで? お金はまだ残ってるはずやで」

あちこち調べてみると、単に電源プラグが抜かれていただけの話でした。

ベッドサイドにはモニターが置かれ、血圧や心電図などの身体状態はナースステーションでも完全管理されています。


ベッドサイドのモニター


バルンも再度装着。完全に紙オムツとなってしまいました。

神経質すぎやん、さっそく2人部屋の部屋代を気にしてます。

「こんな部屋に移されてしもうた」
「そんな心配せんでも、ようなったらまた大部屋に戻ってもらいます」
「看護婦もそう言うとったわ」

絶食しているし、抗がん剤の投薬も止まったので、吐き気は治まった様子です。
便も大量に出たらしく、そのあまりの量に

「ベル(ナースコール)押して、看護婦呼んだわ」

容態が悪くなってから入浴もしておらず、ひげが伸びていたので、ちょっとむさ苦しい顔になっていたすぎやん。
そこで、洗面所からお湯を運び、ボディソープを泡立てて、カミソリでひげを剃りました。
多少そり残しはあるものの、顔がちょっとさっぱりしました。

巡回してくる看護師さんにも盛んにしゃべりかけ、発泡酒の話までしていたらしいです。
前日はどうなることかと思いましたが、ちょっと安心しました。






2008年12月27日のすぎやん

2008年12月27日のすぎやん


すぎやんったら、何やら先走ってます。

「とうとう引導を渡された」
「何?」
「先生が『手術せなあかん』って言いよった」
「え? ほんまに?」
「『手術せな治らん』って言うとった」

主治医がどんな説明をすぎやんにしたのか、さっぱりわかりません。
何にしても、この状態で手術なんて、できっこありません。

「まだそんなん、決まってへんで。それにもし手術するとしても、今は無理やで。そんな体で手術したら、すぐ『なむなむ』やで」

ちなみに「なむなむ」とは、すぎやんと私の間での「お亡くなりになる」という意味の隠語です。
最初に言い出したのは私なのですが、私が何も説明しないのに、すぎやんが意味をすぐわかってくれた(しかも、結構受けた)ので、そのまま使用中。

「とにかく、車椅子に座れるくらいまでは、体を元に戻さな」
「先生もそう言うとった」
「とにかく体の状態をようしてから。手術の話はそれからのことやで」

前日よりも状態はいいみたいで、この日は血圧常時監視はされていませんでした。鼻からの酸素補給はずっと続けられていますが、脈拍も前日より落ち着いているみたいです。

「大丈夫? しんどない?」
「大丈夫や。今からでも帰れる」
「帰られへん」
「なんでや?」
「なんでって、こんなぎょうさん点滴ぶら下げてるくせに。それに、ずっと何も食べてへんのに、このまま帰ったら、すぐ死ぬで」

巡回してきた看護師さんには元気をアピールし、盛んに話しかけていますが、部屋から出て行かれると「しんどいのう」とつぶやいています。
それでもテレビを見る余裕が出てきて、「ヘキサゴン」の再放送を見ながら笑ってました。

血液検査が、12月29日、元旦、1月5日と集中して予定されています。

1時間ほどそばにいて、「帰るわ」と私が立ち上がると、すぎやんは露骨に淋しそうな顔を見せます。

「ほんまに帰るんか」
「うん、また来る。そんな今生の別れやないんやから。また来るし」
「1日、長いぞ」
「そうやな、長いなぁ。でも今は、我慢の時やで」

私が部屋を出る前、「ちょっと寝るわ」と、すぎやんは小さくつぶやいていました。






2008年12月28日のすぎやん

2008年12月28日のすぎやん


布団をしっかりかぶって寝ていたすぎやん。明らかに様子が変です。

「どうしたん?」
「熱がある。晩になったら熱が出る」

寒気もするらしく、暖房温度が高めに設定され、保温のためカーテンも引かれていました。
風邪なのか、薬の副作用で抵抗力が落ちたせいなのかはわかりませんが、頻繁にくしゃみや咳をしています。

前日までは落ち着いていた脈拍も、この日は常時90以上あり、肩で息をしています。酸素不足も相変わらずです。尿の色も、やや赤みを帯びています。

看護師さんも頻繁に巡回して下さってます。

「39度2分まで熱が上がりまして、熱冷ましを飲んでいただいたんです」

ただ、薬の効きがよくないようです。
私がいる間に、看護師さんが熱冷ましの筋肉注射をして下さいました。

体をどう向けてもつらいようで、しょっちゅう首を左右に振っています。
「腰が痛い」と言うので、ベッドを起こしてしばらくじっとしてもらいましたが、すぐまた寝転びました。

熱があるので、結構汗をかいていました。
すぎやんは面倒がりましたが、風邪を引いてもらっても困るので、看護師さんにお願いして着替えさせてもらいました。
また、首筋のIVHポートが不安定になっているようだとの看護師さんの判断で、当直の先生が診て下さいました。結局、大丈夫だということでした。

ものすごくしんどそうなのに、すぎやんは相変わらずです。

「大丈夫?」
「大丈夫や」

すぎやんの答えは変わりません。

この状態では、退院は当分無理です。だけど、もうすぐお正月。
病院の帰りに施設に寄り、すぎやんの部屋を簡単に掃除しました。

何とかこの部屋に戻れるよう、願いを込めて。






2008年12月29日のすぎやん

2008年12月29日のすぎやん


すぎやん、熟睡中。
脈拍数も相変わらず多く、おでこを触ると熱い。

つらすぎて眠れない日々が続いているみたいですので、目覚めるのをのんびり待つことにしました。
巡回してこられた看護師さんによると、前夜は40度近くまで熱が上がったとのことです。

30分くらいで、すぎやんは目を覚ましてくれました。

「よう寝てたか」
「うん、すごいよう寝てたから、起こすのも悪いなと思って待っててん」

言葉は聞き取りづらいのですが、すぎやんは昔話を始めました。
750ccに乗ってあちこち回るのが夢やったけど、死んでしもうた奴がおったから諦めたとか、かつての仕事の話とかをしてくれるのですが、聞いているのがつらいくらいしんどうそうな話し方をします。
たまりかねた私、すぎやんを制止しました。

「しんどいんやろ。そんなに無理してしゃべらんでもええで。肩で息をしているのに、見てたらつらいわ」
「いや、お前がおるからな」

ぽつぽつと話をしていると、看護師さんが数人ぞろぞろと入室してこられ、空きベッドを廊下に出し始めました。
主治医も来られ、病状の説明が始まりました。

この日の朝に行われた血液検査の結果、血小板の数が激減していること。
体の抵抗力が落ちており、感染症に非常にかかりやすい状態であること。
熱冷ましの筋肉注射をしても、発熱が一向に下がらないこと。

そんな説明の後、血小板の輸血をこれから実施するとの言葉がありました。

また、首筋に取り付けているIVHカテーテルが不安定で、点滴が入りづらい状態なので、太ももの付け根に付け替えた方がいいかもしれません、との言葉。

「ただ、血小板不足で血が止まりにくい状態なので、血小板輸血が終わるまでに処置を終えますが、もしかしたら血が止まらなくなるかもしれないです」
「太ももの付け根だと、首筋より楽なんですか? 首筋だと寝るのも何かつらいみたいなんで・・・」
「足を動かしたら、ずれやすいということがありますね。それに、場所が場所なんで、不潔になりがちなんです」

そんな話をしながらも、主治医と看護師の試行錯誤は続き、何とか点滴が順調に落ち始めたので、カテーテルの付け替えは中止になりました。
付け替え手術に備えて、場所を確保するために廊下に出されたベッドも、再度部屋に戻されました。

その後、すぐに血小板輸血が開始されました。
輸血中は看護師さんがずっと部屋におられ、体温や血圧などを頻繁に測定し、輸血終了まですぎやんの様子を常に観察されます。

「これから輸血をします。お名前確認して下さい。間違いありませんか」
「おう」
「ご自分の血液型、何型かご存じですか」
「O型や」
「よくご存じですね。昔の方はご存じないことが多いんですよ」
「わし、昔の人間に見えるか」

すぎやんの言葉に、看護師さんと私は、ずっこけて大爆笑。

「おっしゃる通りです。失言でした」と言いつつ、看護師さんはその後もしばらく笑いが止まりませんでした。

その看護師さんはとても朗らかな方で、輸血が終わるまですぎやんにいろいろ語りかけ、それに応えるように、すぎやんは昔のやんちゃぶりを彼女に話して聞かせていました。

それでも、母がかつてこの病院に勤務していたことだけは、一切言いません。

ほんの数分、看護師さんが部屋を出られた時に聞いてみました。

「お母ちゃんのこと、口では『言うてへん』って言うとったけど、適当にしゃべってるんやと思ってた。ほんまに言うてへんねんな」
「わし、しゃべりやけど、これは絶対言わへん。あいつがかわいそうや」
「かわいそう?」
「だんなが、こんなやつや、って思われるのが」

なんか、きゅんとしました。

輸血中、主治医の先生が「もう、輸血終わった?」と言いながら、様子を見に来られました。

「とにかく・・・ここ1週間くらい、頑張りましょう」

すぎやんにこう声を掛け、部屋を出ようとする先生に、すぎやんは衝撃の質問。

「先生は、酒、飲めるんか?」

絶飲食中で、高熱を出している病人からの想定外の質問に、主治医は本気で絶句してました。

再び室内がすぎやん、私、看護師さんの3人になると、すぎやんはさらに言い放ちます。

「あの先生は、ようしてくれる。ちょっとへんこやけどな」

看護師さんは再度大爆笑。大受けでした。

そんなこんなで、血小板輸血は無事終了。

ですが、再び寒気が襲ってきた様子です。38度台に落ちた体温が、再度上がる気配。
布団を2枚かぶせ、暖房温度を上げ、カーテンも閉めましたが、すぎやんは震えています。


寒気で震えているすぎやん


何とか熱だけでも下がってほしいと、祈るばかりです。






2008年12月30日のすぎやん

2008年12月30日のすぎやん


よたよたと病室に向かっていると、前日の血小板輸血の時にお世話になった看護師さんにばったり会いました。

「一旦37度8分くらいになったんですけど、また熱が上がり始めているようですので、様子を見てまた注射します」

すぎやんは「寒い」と言いながら、がたがた震えています。おでこに手を当てると、やはり熱い。
脈拍数は80台と、前日よりは落ち着いていますが、ずっと肩で息をしています。

ものすごくつらいはずなのに、私の顔を見ると気を遣い、一生懸命しゃべり始めるすぎやん。言葉がもつれ気味で、何をしゃべっているのかは断片的にしかわかりません。
なんでここまで娘に気を遣うのかと思うと、泣けてきます。

話が一段落した後、「しんどいんやから、そんなに気を遣ってしゃべらんでもいいよ。顔を見に来てるだけなんやから、そんなサービス精神旺盛な状態でしゃべらんでもいいよ」と声を掛けると、すぎやんは脱力。
そして、「必殺」の再放送を見始めました。

しばらくすると、看護師さんが巡回して来られました。
体温測定すると、再び39度台。熱が一向に下がらないので、看護師さんまで困った顔をしておられます。

「もうしばらくしたら、注射しましょう」と看護師さんから声を掛けられたすぎやんは、ひとこと。

「よう効く薬にしてや」

筋肉注射を接種後しばらくすると、すぎやんは「眠たい」と言い出しました。
寒気も徐々に治まり始めたようです。
テレビをつけたままうとうとし始めたので、テレビを消し、「ゆっくり寝て」と声を掛けて、病室を後にしました。






2008年12月31日のすぎやん

2008年12月31日のすぎやん


すぎやんの熱が下がりません。
前日よりもさらにつらそうで、肩で息をしています。息づかいも荒く、顔色も良くありません。

「寒い」

病室は暖かく、布団をどっさりかぶっているのに。

すぎやんは私との会話を試みようとがんばってますが、口がもつれたような状態で、非常に聞き取りにくいです。
慣れている私でもダメなのだから、主治医や看護師さんは大変だろうな。

この日、また血液検査があったようで、結果が床頭台の上に置かれていました。

貧血は相変わらずですが、赤血球だけでなく、白血球の数も激減しています。ヘモグロビンの値も低いです。
すぎやんの体内に、酸素が行き渡っていないということです。

それに、肝臓関連の値が非常に高くなってきています。

予断を許さない状況であることは、もう間違いありません。

ため息をついていると、すぎやんは「体が痛い」と言い、横を向こうとしています。
すぎやんがベッドの柵を何とかつかんで横を向いている間、背中をしばらくさすりました。

「布団かぶってへんけど、寒い?」
「寒うない。ぬくい」
「寒かったら言うてや」
「お前の情で、ぬくいんや」
「・・・おもしろいこと言うなぁ」

しばらくして再度寝転んだのですが、それでも痛がります。
そこで、体の右側に挟んであった三角形のクッションをはずしてみました。


スウィングフロート(三角小)/D-1(D-I)
スウィングフロート(三角小)/D-1(D-I)


「あ、ちょっと楽になった」

すぎやんはそうつぶやき、すぐにうとうとし始めました。

寝息の呼吸も荒いので、見ているとつらいです。






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