2008年7月6日のすぎやん

2008年7月6日のすぎやん


すぎやんはベッドに寝転んで、クーラーを入れ、準備万端で私を待ってくれていたようです。
いつも大体夕方3時〜3時半くらいに施設に行きます。この日もこの時間帯に到着したのに、文句を言われました。

「遅いから何かあったんかと思ってた」
「いつもこれくらいの時間やん」
「いつも1時半くらいやろ」
「その時間には、だいぶ前から来たことないで」
「そうか、2時半やな」
「だから〜」

そんなことを言っていると、スタッフが短冊とペンを持って来られました。
翌日は七夕。談話室兼食堂に飾ってある笹の葉に吊すんだそうで、何か書いて下さいとのこと。

「何を書こうか」
「もっと飲ましてくれ、って書いとけ」
「毎晩飲んでるやん」
「もっと飲ませろ、って書いとけ」
「いや、ちょっと、それは」
「そんなん、どうでもええやんけ。書かんとけ」

それでもしつこくペンを片手に悩んでいる私を見たすぎやん。

「気が短いのが直りますように、って書いとけや」
「それ、ええなぁ」
「あほ、書くな、そんなこと。またスタッフに笑われるやんけ」
「ええやん、大阪人やねんから受けを狙わな」

で、それをそのまま書いて、スタッフに渡しておきました。

ところでこの日のすぎやんは、完全に鬱状態。「どうせ、わしなんて」とひがみっぱなし。
私が何を言っても、笑顔を見せません。

ここのやつと顔を合わせるのが嫌や。
わしが行くとこ行くとこ、(一部の入所者さんが)ついて来よる。
みんなちゃっちゃと歩いて、どこにでも行きよる。そんなやつがなんで施設におるんや。そんなやつらは家に帰ったらええんじゃ。

介護保険を利用した施設だから、要介護認定がおりた人は誰でも入れる、という正論は、すぎやんには通じません。
そこで、ここは病院ではない、さっさと歩けても病気がちの人もおると言っても、

「そしたらそんなやつは、入院したらええんじゃ」

すぎやんのいらだちの原因のひとつは、徐々に体力が落ちてきていて、今までは比較的楽に出来ていたことが、だんだんと出来ずらくなってきているためではないかと、私は思います。
中には、自転車に乗る方もおられるようなので、余計につらいのでしょう。

すぎやん的には、「家で私と暮らせばこの状況を打破できる」と考えています。

「家に帰ったら、部屋の中でじっとしてテレビ見とく。こんな情けない格好で、出られるかい。お前の言うことは、何でも『はいはい』て聞く」

大嘘です。

すぎやんが家にじっとしている訳がありません。絶対にどこかへ出かけ、マンションの住人の誰かと諍いを起こすに決まってます。

それに、今までいろいろな病院や施設に行きましたが、1度として文句を言わなかったことはありません。
どこへ行っても、必ず誰かとけんかしてます。
好き嫌いが激しくて、勝手に仮想敵国を作り、結局自分で自分の首を絞めています。
私にも、言いたい放題です。

すぎやんが自分に正直に生きる姿勢は、私は嫌いじゃありません。
でも、すぎやんが今の娑婆で生きるのは、とてつもなく難しいことだと思います。

私が帰る準備を始めると、ますますしょぼくれます。「もっとゆっくりせえや」と引き留めます。

「帰ったって、どうせ飯食って寝るだけなんやろ。暇なんやろ」
「・・・」
「もっとおれや」

だけど、すぎやんの言うことを聞き届けていると、きりがありません。
いつかは私も帰らなければなりません。

「ごめんな、きりがないし。また来るわ」
「ほんまに帰るんか」
「なぁ、元気出して行こうや。そんな『わしのことなんて、よけもんや』とか言うたらあかん。誰もそんなこと、絶対思ってないで」
「わし、もう何も言わんと、部屋でじっとしてるわ」

時々こんな鬱状態があるのですが、この日はかなりきつかったです。
さすがの私もしんどかったです。






2008年7月13日のすぎやん

2008年7月13日のすぎやん


先週のような鬱状態だったらどうしようかと思っていましたが、この日は先週よりも元気そうな顔をしていました。
ただ言葉がやや聞き取りにくく、それは本人も自覚しているようでした。

「舌がもつれる。うまいことしゃべられへん。最近調子悪い」
「先生に具合悪い時はちゃんと言うてる? 言わんとまた入院やで」
「ちゃんと言うてる」
「しんどい時は、スタッフに言わなあかんで」
「ここにも看護婦がおる。わしはブザーを押さん男や・・・」

何ですか、その「ブザーを押さん男」って。
(「ブザー」とは、部屋に備え付けのナースコールのこと)

「そやからたまに押したら、『すぎやん、どうした、何があったん?』って言うて、スタッフが飛んできよるわ」

ところで、以前は冗談と本気の区別ができていたことが、少しずつ区別しにくくなってきているな、と感じることが、最近よくあります。

すぎやんは以前から、私にこんなことをよく言っていました。

「わしが死んだら、そこらへんに埋めて、『すぎやん、やっと死によった』って言うて、万歳するんやろ?」

その質問をする時のすぎやんの表情は、それはそれはうれしそうでした。
私をからかって遊んでいるのがよくわかったので、私も「そやな、赤飯炊かなあかんな」という感じで応え、2人で軽口の応酬を楽しんでいました。
だけど最近は、こういうことはできなくなりました。

この日もこんなことを言い出しました。

「お前に迷惑かけるから、晩寝たら朝死んでへんかなって思うんや。そしたらお前は万歳して、そのへんに埋めるやろ」

半ば本気のような雰囲気が感じられたその口調に、「これではいかん」と思った私。ぴしゃりと言い放ちました。

「何回もそんなこと言うて。もういい加減にしなあかんで」

本気モードで怒った私を見たすぎやん、しょぼくれます。

「そやけど、わしもいろいろ考えるぞ。お前にようしてもろうてるのに、こんなこと言うたらあかんな、とは思うてるけど、つい口から出てしまうんや」
「そうやろうなとは思うてるけど、やっぱり聞いてしまったら、私もかちんとくるやん。そんなにひがまんでもええやん」
「最近、へんな夢をよう見るんや。そやからかもしれへんな」
「どんな夢?」
「ようわからんけど、へんな夢や」
「あんまり考えすぎたらあかんで。考えすぎたら、よけいにへんな夢見るし。今まで通り、思うたように生きてたらええやん。病気になったら、どうするん」
「考えすぎたら、血圧も上がるしのう」

すぎやんが何をいろいろ考えているのかはわかりません。
ただ、自分の父親がこんなにさびしがりの人間だったなんて、子供時代は思いもしなかったです。

すぎやんの季節は、確かに変わろうとしています。
歯がゆいことばかりだろうけど、何とか乗り越えてほしいと祈るばかりです。






2008年7月20日のすぎやん

2008年7月20日のすぎやん


すぎやんはベッドに寝転び、冒険家の三浦雄一郎さんが今年5月に無事成功した、エベレスト登頂ドキュメントを見ていました。

「あんなとこに登るのにどっから金が出てるんかが、わからん」
「スポンサーがようけついてるんや。75歳でエベレストに登るっていう夢に、スポンサーがつくんや」

感動的な番組なのに、すぎやんには邪念だらけ。

「山が好きなやつ、ようけおるぞ。山がそこにあるから登るんやな」
「難しい言葉、知ってるなぁ。あの人、すぎやんより年上やで。すぎやんもまた、ぱーっと一花、咲かさな」
「わしはもうあかん。悔しいのう」

自分より年上の方が元気に飛び回るのが、うらやましくてたまらないすぎやん。
こういった傾向は以前から見え隠れしていましたが、如実に「うらやましい」という態度を出すようになったのは、ここ最近のことです。

「わしもいろいろ考えるぞ」
「だから、そんな考えすぎたらあかんって。そんなに人のことをうらやましがるなんて、すぎやんらしくないで。すぎやんは、なにくそで今まで来たやろ」
「そうや、わしは負けるん嫌いや」
「そやろ。だから、ぼちぼちやったらええやん」

ところで、夏は半袖のポロシャツをすぎやんに着てもらっています。すぎやんはそのポロシャツを、就寝時にも着用しています。いわゆる、着っぱなしというやつです。
そのうちの数枚は、前が開いているタイプで、そこにはボタンも何もついていません。

ポロシャツ

気やすさを考慮して選んだもので、着用して早や2夏経過しています。
なのにこの日突然、すぎやんは「前が開いているのが嫌だ」と言い出しました。

「朝起きた時に、シャツが肩口まで広がってしまってるんや。外に出てる時も、広がってしまうのが恥ずかしい。わしはきちんとした人間やからな」

「もっと早く言ってくれたらいいのに」と言う私に、すぎやん反論。

「この間からお前に、2回くらい言うた」
「聞いてへん」
「お前はすぐ忘れる。絶対言うた」
「そやから、スタッフに言うたんとちゃうの。私は初耳やで。そのシャツ、もう1〜2年着てもらってるけど、そんなん言うん、今日が初めてやん。開いてる方が便利かなと思って買ったんやけど、嫌なんやったらもっと早う言うたらええのに」
「お前に気を遣ってたんや」

はいはい。

スナップか何かを付けたらええかな、家にスナップはないから買いに行かなあかんな、と私がつぶやいていると、

「また来るんか」
「え?」
「(スナップを)買うて、また戻ってくるんか」
「いや、今日はもうここにおるし。買いには行かへんし」
「明日か?」
「明日かどうかは、わからへん」
「いつや」
「いつって、そんなはっきりわからへんし」
「どこで買うんや。そんなん、売ってるんか」
「売ってるやろうけど、私あんまり裁縫関係の店に行かへんし、どんなんがええか探さんと」
「お前は裁縫は、ちっともせえへんもんな」
「・・・ボタン付けくらいは、するで」
「ほんまか、そんなんできるんか?」

ああ、もう、うるさい。






2008年7月25日のすぎやん

2008年7月25日のすぎやん


前回のスナップ事件解決のため、夜7時過ぎにすぎやんを訪問しました。
平日の夜にすぎやんの所に行くのは、ものすごく久しぶり。

私を見て、きょとんとした顔を見せるすぎやん。
既に夕食は終わり、ズボンを脱いで晩酌を開始する直前だったようです。

予想通り、すぎやんはスナップの件をすっかり忘れていた様子。
それで、「家でスナップを付けるから、ポロシャツを取りに来た」と説明すると、ようやく思い出したようで、

「やっぱりお前がおらんとあかんな」
「いやいや、私はすぎやんのお小遣いとビールを運ぶのが仕事です」
「そんなことは、ない」

一応、否定して下さいました。

ただ持って帰ろうにも、1枚は着用中、1枚は洗濯中。
すぐにスナップを付けられるのは1枚のみでしたが、とりあえずそのポロシャツを持ち帰ることにしました。

すぎやんには、「私が来る日は、日曜日」という感覚が染みついてます。だからこの日も、「今日は日曜日やな」とずっと言っていました。
そう言った後すぐ、「今日は金曜やから、ドラえもんや」とも言います。

もう、何が何だか。

「ドラえもんの後は、しんちゃんや。ロト6も見る。おもろいぞ」

最近は、ドラマ「ロト6で3億2千万円当てた男」がお気に入りらしいのです。

大金がからむドラマには、本当に弱いすぎやん。どれだけ欲まみれか。






2008年7月27日のすぎやん

2008年7月27日のすぎやん


暑いので、かき氷とソフトクリームをコンビニで買って、すぎやんのところに向かいました。

「自然の風が、気持ちええ」

そうおっしゃいますが、風は全く吹いていません。
冷房なしのエコ仕様で過ごすのも結構ですが、普段あまり汗をかかない私が断言します。

すぎやんの部屋、暑すぎです。
第一、すぎやんも汗だくじゃないですか。

すぎやんがかき氷、私がソフトクリームを食べつつ、テレビで高校野球観戦。

「決勝戦や。大阪南部の」

PL学園対近大付属の試合で、私が見始めた時点では6対2でPLがリードしていました。

「昨日は大阪北部の決勝を見てた。優勝したんは・・・えーっと、どこやったかな」
「・・・・私、見てへんからわからへんで」
「えーっと・・・」

すぎやんは結局思い出せず、私がその学校名を知ったのは、画面に「大阪桐蔭」という文字が出てきた時でした。

「PL、強いな。そやけど全盛は、桑田と清原がおった頃やったな」とかなんとか言っているうちに、近大付属がぐんぐん追い上げてきました。

「PLは、あかんな」
「さっき強いなって言うとったやん」

時間毎に、すぎやんの評価はころころ変わります。
結局、近大付属が延長戦でサヨナラ勝ちし、甲子園への切符を手にしました。

で、先日からのスナップの件。
家でスナップを付けたポロシャツを見せて、

「これでいい?」
「おう、スナップが一番楽なんや」

了承頂いたので、残り2枚のポロシャツに、順番にスナップを縫い付けていきました。
着用中のポロシャツにも縫い付けるために脱いでもらおうとした時。

「うわ、袖口破れてるやん。気、付かへんかったわ」
「そうか? 破れてても、かまへんやんけ」
「あんたはかまわへんかもしれんけど、私がかまうわ」

着用中の山吹色のポロシャツは、すぎやんのお気に入り。
なぜわかるかというと、同時期に購入した他のポロシャツに比べて、へたりが異常に早いから。

「襟のとこも薄くなってる。もう今年でこのシャツ、終わりやな」
「そうや、使い捨てやな」
「使い捨てって・・・これもう、3年くらい着てもらってる」

でもまぁ、広義に解釈すれば、確かに使い捨て。

「今度また、ええのん買うてくれや。絵の入ったやつ」
「あのさぁ、もうじき73やで。年考えな」
「ええやんけ。外歩いてるおっさんも、派手なん着てるぞ」

欲はたんまりありますが、日時・曜日の感覚がかなりうとくなってしまったすぎやん。

「この間、私が何曜日に来たか、覚えてる?」
「土曜日や」

ちなみに正解は、金曜日。2日前です。

「土曜日って、昨日やで。昨日、私の顔見た?」
「・・・違うな、金曜日、やったかな?」

一事が万事、こんな調子です。
今の施設で暮らしはじめて、もう5年以上経過。それなのに、往診の先生が何曜日に来るとかが、未だに覚えられません。

ただ入浴曜日だけは、何とか記憶しています。
時々曜日が変わるので混乱することもあるようですが、一時期のように「24時間前から入浴準備万端」ということはなくなりました。

「すごい進歩やな」
「そうや。今では風呂のちょっと前に準備するようになった」

「ちょっと前」といっても、当日の朝ですけどね。
ちなみに入浴時間は、夕刻です。






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