2006年4月2日のすぎやん

2006年4月2日のすぎやん


雨が断続的に降る1日。いつもは午後3時前後に到着するように家を出るのですが、この日はいつもより1時間ほど施設到着が遅くなりました。
そのせいで、玄関先で施設長の木下さんに「むっちゃ待っておられましたよ」と言われ、別のスタッフにも「お待ちかねですよ〜。1時過ぎから廊下をうろうろしておられましたよ」と言われる始末。
やれやれ、って思いながら部屋に入り、すぎやんの顔を見るなりこう言いました。

「1時過ぎから廊下をうろついて待たないで下さい」
「わしは待ってへん。運動しとったんや」

そこへ、さっき声を掛けてくれたスタッフがコーヒーを持ってきて下さったので、さっそく告げ口。

「あのね、『私のことなんか、待ってへん』って言うんですよ」
「まーたまた、そんなことを。さっきとお顔が違いますよ。うれしそう」

スタッフと2人でうひゃひゃひゃひゃひゃと笑いながら冷やかすと、すぎやんは照れ笑いを浮かべていました。

ところで先週、スタッフのつねちゃんからお電話を頂きました。
「すぎやんと甲子園に行って、帰りにお好み焼きを食べに行かせていただきます」
「え? お好み焼きはもう数週間『連れてってもらう』って騒いでますけど、甲子園に行くって、すぎやん言ってました?」
「はい・・・」
「いえね、2〜3週間ほど前、『春の甲子園はおもろないから、夏に連れてってもらうんや』って言うてたんですよ。また話が変わってるなぁ。ほんまに困ったおっちゃんですわ」

電話口でつねちゃんは笑っておられましたが、そんなこんなで、3日(月)に甲子園に行き、帰りに施設近くのお好み焼き屋さんで食事をするとのことです。
すぎやんは、ものすごい馬力で楽しみにしています。

「明日、晴れるかな」
「わし、今晩、(興奮して)寝られへんかもしれへん」
「明日、朝早うからうろうろしてまう」
「そやけど、わしは甲子園より、お好み焼きが楽しみや」

このセリフを飽きもせず、延々繰り返していました。

去年の春にも甲子園に行っているすぎやん、様々な解説が入ります。
外野席近くに、車いすが陣取れるスペースがあること。
そこまではスロープになっており、係員のにいちゃんが押していってくれること。
いつも来ている障害者の人がいること。
ピッチャーがウォーミングアップをしているのが見えること。
そのピッチャーが投げるボールの速さにびっくりすること。

とにかく、自分「だけ」のためにお気に入りのスタッフが付き添ってくれ、自分「だけ」のためにお好み焼き屋さんに専用席が用意されている、ということに無上の喜びを感じるすぎやん。ちっちゃな子供と一緒です。

ちなみに、「春はおもろないから、夏に連れていってもらうんや」のセリフ、忘れてしまっている様子でした。ふう。




2006年4月9日のすぎやん

2006年4月9日のすぎやん


天気が良くて暖かい日。施設の外にある桜も満開で気持ちがよいので、外のテラスで過ごしました。

先日スタッフのつねちゃんに連れて行ってもらった高校野球(というより、球場に到着するまでのこと)について、一生懸命しゃべっていました。

「あっちに行ったら高いから」と、つねちゃんが出発前にスーパーでビールを買ってくれたこと。
どの駅でも駅員さんが待っていてくれて電車の乗降を手助けしてくれたこと。
駅にエレベーターがあって便利だったこと。
阪急電車から阪神電車への乗り換え通路が人だらけで「すんまへんなぁ」と頭を下げっぱなしだったこと。

「(電車に)障害者でも安心して乗れるな。びっくりしたわ」
時代の変化に驚くすぎやんです。

こんなことをしゃべっていると、近くを黒い猫がうろついています。

「あの猫はいつもこのへんをうろついてる。何を食ってるんやろ」
「誰かがえさをやってるんとちゃう。食べな生きていかれへんし」
「鳩を食ってるんやろ」
「鳩? 今時の猫、そんなん食べるか?」
「わしが勤めとったころ、現場にようけ鳩がおった。それを猫が狙うてて、うまいことつかまえよった。まず首をきゅっとしめよんな」
「ふーん」
「そやけど、気つけんと、猫も三味線屋に狙われよる」
「三味線屋! いつの時代ですか〜」

2人でうひゃひゃひゃと大笑いしました。

しばらくすると、施設にいるお母さんの様子を見に来られていた方が通りかかりました。施設まで自転車で2〜3分の所にお住まいで、毎日来られるのですぎやんとも顔なじみ。乗りのよいとても明るいおばちゃんです。
3人でしばらくしゃべっていると、施設の向かいにあるマンションの住人が、布団をぱんぱん叩き始めました。

「あいつ、毎日布団を叩いとる」
「あんな勢いよう叩いたら、綿が切れるのに」
「ほんまやな」

それからすぎやんとおばちゃんは、布団叩きの住人の悪口を言い始めました。
「あんなやつ、布団ばんばん叩いて捕まったおばはんといっしょやんけ」
「ほんまうるさいわ。人の迷惑考えたらええのに・・・あかん、こんなこと言うたら。聞こえたらえらいこっちゃ」

穏やかな日差しの中で、ゲラゲラと笑うひとときでした。




2006年4月16日のすぎやん

2006年4月16日のすぎやん


「平天、食いたいなぁ。わし、あれが好きやねん」

なんだか知りませんが、突然こんなことを言い出したすぎやん。

ちなみに平天とは、これ↓

平天盛り合わせ

標準語(!)で言えば薩摩揚げのようなもので、大阪ではこれを天ぷらと言うのです。平べったいのが、平天。

実は前にも同じようなことを言っていたので、半月ほど前に運んだばかりです。ですがそのことは、既に失念されている様子です。

「この間持ってきたやつ、おいしかった?」
「え・・・?」
「なぁ、おいしかった?」
「お、おう、うまかったぞ」

スーパーにはええのがないとぶつぶつぼやき、「来週絶対持ってきてくれよ」と、3回くらい繰り返していました。やれやれ。

ところで今日のすぎやん、いつもにもまして音に敏感です。

「また(談話室兼食堂にある)テレビを、がんがん鳴らしとる。いっぺんまた、どやしたらなあかん」
「え? 聞こえへんで」
「いや、わしにはがんがん聞こえる」

実は、認知症の方が無意識にテレビをつけ、ボリュームを大きくするということがたびたびあり、すぎやんはその都度「静かにせえ! わからんやつにテレビをいじらすな!」とどやしまくっていたようなのです。おかげで、テレビの音量が少しでも大きくなると、スタッフがあわてて調整しておられるようです。
「すぎやんが怒鳴ってくる」の合い言葉とともに。

でもこの日は、部屋の扉を開けてもかすかに音が聞こえる程度。どんな番組が放映されているのかなんてわかりません。

「幻聴とちゃうん」
「あほか。わしは絶対幻聴なんかならへん」

すぎやんの「絶対」は、あてになりません。

「そやけど、私には聞こえへんで」
「おまえの耳が悪いんじゃ」

なんでやねん。

「なぁ、大丈夫? 聞こえてへん音が聞こえてるんとちゃうん?」
「そんなんちゃう。はっきり聞こえる」
「じゃぁ今、何がなってる?」
「・・・」

答えられないすぎやん。

「あんまり神経質になったらあかんで。あんたにはうるさくても、他の人には全然気にならへん音やねんから」
「そういや、食堂のおばちゃんに『すぎやん、そんなに音、大きしてへんで』って言われるなぁ」

とにかく、ほんのちょっとの物音でも敏感に反応し、「わしがうるさいと思えば、みんなうるさいと思っている」という価値観でどなるすぎやん。
協調性のかけらもありません。




2006年4月23日のすぎやん

2006年4月23日のすぎやん


今日のひとことは、私のセリフです。

いつものように原付を走らせて施設近くまで来ると、前方にすぎやんが見えます。通りがかりの人と挨拶を交わしているようですが、車いすを道路の真ん中に止めてます。

「あぶないから、端に寄らなあかんやん」
「どこが真ん中やねん。ちゃんと端におるやないか」
「どこからどう見ても、真ん中やん。危ないで」
「車がどきよるわい」

すぎやんが暮らす施設一帯は、近年再整備された閑静な住宅地です。そんなに頻繁に車は通りませんし、猛スピードを出す車もありませんが、それでも遠目から見ていてもすぎやんの停止位置は怖いです。

「このごろは物騒やねんから、気を付けんと。そんなこと言うてたら、はねられるで」
「はねられたら、あっという間(に死ぬ)やんけ。お前、バンザイやぞ」

自分が死んだら私がバンザイして喜ぶと、常々言っているすぎやん。
私に言うだけで飽きたらず、スタッフや他の家族さんにまで言いふらしています。ジョークだとわかって下さってるんでいいんですけど、困ったもんです。

「焼き場の釜のふたを閉めて、火をつけたらしまいや」
「はいはい。そうやな。しまいやな。最近、焼き場が新しくなったから、何やったらそこで焼いてもらう?」
「新しくなったんか。釜、増えたんか」

こういった会話はしょっちゅうなので、私はもう飽き飽きしています。ただ、すぎやんに事故で死んでもらってはたまりません。

「事故で死なれたら、警察に呼ばれたりしてめんどくさいわ。自然死でお願いします」
「そうか、自然死か。ぴんぴんころり、やな」
「そうそう」

2人でケラケラと笑い合いました。

天気がいいので外にいると言うので、私ひとりで部屋に荷物を置きに入り、先週さんざん言っていた天ぷらを、部屋の冷蔵庫に入れておきました。

「天ぷら、冷蔵庫に入れといたで」
「え?」
「この間、天ぷら、天ぷらって5回くらい言うとったから、持ってきたで」
「お、おう。そうか。晩が楽しみやな」
「・・・先週さんざん言うてたこと、忘れてたやろ?」
「忘れてへんぞ。お前見て『あ、天ぷらが来た』と思ってたわい」

絶対、忘れてたと思います。




2006年4月30日のすぎやん

2006年4月30日のすぎやん


先日、新しい介護保険証が届きました。結果は、要介護3。これまで要介護1で一番軽い認定だったのですが、いきなり2段階も上がりました。

介護保険で利用できるサービスは、その料金の1割を負担することで受けることができますが、限度額というのが設けられています。つまり、その限度額を超える分については原則自己負担となるのです。限度額は、要介護度が高い(重篤な状態な)人ほど、高く設定されています。
すぎやんがお世話になっている施設は、介護保険の限度額めいっぱい使ってサービスを行うという施設に分類されています。だから、介護度が上がるということは月々の負担額も上がるということなのです。何だか複雑な気分です。

すぎやんはといえば、「わしは絶対に、ぼけてへん」とは言うものの「半ボケ」状態です。
一瞬一瞬が勝負なので、昨日のことなど過去の話、1週間前のことは忘却の彼方。数週間より前のことは大昔となり、記憶は全部いっしょくたです。

この施設にお世話になる前は、あちこちの病院や施設を半年から1年ごとに移動する日々を送っていたすぎやん。時々その頃のことを思い出すのですが、記憶がミックスジュース状態。秒単位で数回同じ質問をすると、そのたびに全て答えが違うのでひっくり返りそうになります。
この日も、現在の施設までのことがすぎやんの記憶の中で1本の線になるまで、十数分要しました。そして最後に、こんな質問をしてみました。

「それで、去年(腸閉塞で)入院した時、ここから病院までどうやって行ったか覚えてる?」
「福祉タクシーやんけ。タクシーでここまで帰ってきたぞ」
「ぴんぽーん。それは正解やけど、ここから病院までどうやって行ったか覚えてる?」
「タクシーで帰ってきたぞ。バックで(駐車場に)入れよった」
「しょうもないことはよう覚えてるなぁ。帰りのことやなくて、行きしなのことやがな」
「タクシー、やったかな?」
「ぶっぶー。不正解」
「・・・寝台車、やったかな」
「うーん、近い」
「なんや、寝ころんで行ったぞ」
「うん、それは合ってるけど。確かに寝ころんで行ったけど」
「・・・・・」

答えは、救急車。すぎやんからは、正解が得られませんでした。




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