
最近は、朝食を済ませるとスタッフに声を掛け、ひとりで施設の周りをうろついているようです。入居者さんの外出時には必ず誰かが付き添うのが原則なのですが、ある程度判断能力があるすぎやんは黙認されています。
すぎやんは、「自分はしっかりしている人間である」との自意識が強いので、ある程度自由に行動できないと、切れるのです。入所当時は、かなりスタッフに当たり散らしたみたいですが、最近では施設側もずいぶん慣れて下さいました。
外にすぐ出る理由は、痴呆の人の大きな声や徘徊。とにかくいらいらするみたいです。見たり聞いたりする度に、怒鳴っています。
「あいつらは、なんべん注意してもわかりよらへん」
「しゃあないやん。ぼけたはんねんから、なんぼ言うたかって、無駄やで」
「職員もそう言いよる。すぎやん、言うたかっていらいらするだけやで、って」
「ぼけてる人を馬鹿にしてるみたいやけど、いつ自分がそうなるかわからへん。私かって、明日なるかもわからへん。あんたかってそうやで」
「わしは絶対、ぼけへん」
「そんなん、わからへん」
「ああいうやつらは、頭使わへんから、ぼけよんねや」
「そんなこと、言うたらあかん。ぼけは、一種の病気やから」
当分は、堂々巡りが続きそうです。